英国大使館主催・福島第一原発の現状と今後についての討論会(和訳の続き)
昨日の和訳の続きです。この討論会の中で述べられている専門家の見解が妥当なものであるならば、少なくとも福島第一原発の半径30km圏外にいる人たちが心配することではないということになります。そんな心配をするよりも、現地で復旧作業にあたっている方々、地元の方々の無事を祈り、ぼくたちにできることをすることが大切ではないでしょうか。
以下、和訳の続きです =============================
司会:さて、別の部屋には30人ほどのスタッフがおりますが、そちらから何か質問はありますか?
質問者:こちらでは事前に質問をまとめてみました。4つの質問がありますが、まず最初の質問はチェルノブイリ原発事故について。事故の後、他の国でも何人かの人が病気になりました。なぜそのようなことが起きたのでしょうか。
ヒラリー:チェルノブイリ原発事故の後、他国においても汚染された食物を食べたり汚染された水を飲んだ人がいました。チェルノブイリと日本では状況はまったく異なると思います。日本は非常に発達した計画が敷かれており、汚染された食物や水が人の口に入ることを確実に避けるよう処置がとられるでしょう。チェルノブイリでの事故の際に他国で被害に遭った人は、事故による直接的な被爆ではありません。
司会:次の質問をどうぞ。
質問者:子供たちや妊婦に関しての放射性物質の許容量についてうかがいます。彼らに対して許容量のレベルが異なるということはありますか?
ヒラリー:許容量のレベルについては、もっとも影響を受けるであろうグループを基本として算出されています。ですから、許容量のレベルとして出ている数字は子供たちや妊婦の方を考慮に入れた上で出された数字だということです。
ジョン:つまり私のような太った大人を基準にはしていないということですね(笑)。
質問者:次の質問は、現在自治体などではヨウ素剤を服用すべきかどうかといった議論があります。どのような状況でヨウ素剤を服用すべきか、また先生はヨウ素剤の積極的な服用を勧めますか?
ヒラリー:この質問に答えるのに最適な人物は、医療政策管理に従事する医者であるニック・ケント氏でしょう。ニック、お願いします。
ニック:まず、放射性物質に含まれる揮発性のヨウ素が、それを直接吸い込むことによって体内に入ってしまう危険性があるのは、原子力発電所から非常に近い場所に限られます。もしも事故が起こった時、その近くにいた人たちについては間違いなくヨウ素剤を服用されることを勧めます。これは甲状腺からの放射性ヨウ素の摂取を防ぐためです。つまり、現場近辺にいるわけではなく、また爆発も起きていない状況で、東京にいる人々がヨウ素剤を服用する必要はありません。
放射性ヨウ素が体内に入る方法としてもう一つ考えられるのは、そしてこれが重要なのですが、自然環境の中にとどまったヨウ素が作物に入ったり、動物の体内に入ることでそこから作られる牛乳が汚染され、それを人間が飲んだり食べたりしてしまう場合です。チェルノブイリ原発事故では、その後かなりの数の甲状腺がん患者が生まれてしまいました。この原因が、事故が発生したウクライナ地域における汚染食物、特に牛乳の摂取であったことは明らかです。
今回の場合、食物連鎖が取り上げるべき深刻な問題になるとは考えられませんし、もしそうなった場合でも、ヨウ素剤を摂取することで食物連鎖に対抗しようとするならば相当長い期間をかけてヨウ素剤を投与し続ける必要があります。甲状腺への影響といったその他の理由においても、ヨウ素剤の長期投与という手段は適切ではありません。
これまでの話を要約しますと、ほとんどの方が原子炉の近辺にいて放射性物質を直接口から吸い込む危険性がある(この場合はヨウ素剤の投与が原則)わけではなく、食物連鎖の過程で放射性ヨウ素の影響を受けるわけでもないのですから、対応策としてヨウ素剤を摂取する必要性はまったくないということです。
司会:ありがとうございました。
質問者:もう一つ質問です。先生が想定するシナリオにおいて、どのくらい強い風が吹いた場合、福島から東京まで放射性物質が直接到達する可能性があるのでしょうか? どんなに強い風が吹いてもその可能性はないのでしょうか? それともある程度の数字を予測されていますか?
ジョン:基本的にはそのようなことは起こりえません。
質問者:被爆した人との接触について教えてください。
ヒラリー:被爆という問題が発生するのは原子炉近辺で直接作業に当たっている方々に限られると思われますし、その方々に対しては間違いなく除染という処置がとられるはずです。30km圏外の場所においては健康被害を引き起こすような被爆が起きることは考えられません。
ジョン:ここがポイントですね。放射性物質を大量に受けてしまう恐れがあるのは、現場でこの困難を何とか解決しようと働いている作業員の方々なのです。彼らは精密な検査を受けることになり、原子力業界ではよく知られている除染という処置がとられます。私が推測するに、20km圏内にいる一般市民においてもこれまでの段階では深刻なレベルの放射能を浴びた人はおそらく存在しないだろうと思います。もしもそのような人がいるという情報を日本政府が発表したら、かなりの驚きです。その場合も被爆した人を除染するという処置をとるでしょう。基本的に現地で作業に当たっている方々が自主的に現場を離れて近くのお店に入ったり、ということはあり得ません。彼らは間違いなく、非常に厳しくかつ有効な方法で除染を受けることになります。
質問者:今日の会で話されたことは人々に安心を与える、大変意義深いものだと思います。この内容をポッドキャストなどにアップロードして、みんながネット上で共有できるようにしたらどうでしょう?
ジョン:そのようにするつもりですよ。
司会:英国大使館員としてその質問にお答えします。可能であればポッドキャストに音声をアップロードしますし、それが無理な場合でも文章に起こしてネット上に掲載します。
質問者:それはいいですね。ありがとうございます。
司会:他に質問のある方は? すでに質問した方でも構いませんよ。
質問者:東京で雨が降った場合はどうでしょうか? 屋内にとどまったほうがいいのか、あるいは傘や帽子を使用すべきでしょうか。
ジョン:心配には及びません。問題の焦点は爆発が起こった場合、どのくらいの高さまで放射性物質が上がるのかということです。これは先ほども申し上げた通り500mです。そして今のところ爆発は起きていないし、臨界点に達し破損が起きたということもない。今後想定される最悪の事態が起こったとしても、東京において問題となることはありません。もしも20~30km圏内で雨が降った場合は、放射性物質を含んだものが沈積することにはなります。
質問者:先ほどボランティア活動について質問しましたが、福島原発から50~60km離れた場所であれば、被爆の危険性はないと言えるでしょうか?
ジョン:ヒラリーとレスリーの2人ともがうなづいていますから、そういうことですね。
ジョン2:英国健康保護局のジョン・シンプソンです。政府の指定範囲外でボランティア活動をする人たちについては我々もアドバイスを受けていますが、最も起こりうるのは身体的な怪我、なぜなら地震の影響で道路や家屋が破壊されてしまっているためです。それと比べれば被爆の危険性はリストのずっと下の方ですね。
質問者:先ほど食物汚染について触れられましたが、魚介類における汚染の危険性はどうでしょうか?
レスリー:可能性はあります。ただし日本では非常に高度な監視プログラムが組まれており、潜在的な影響という点においても確認が行われます。国民に魚介類の消費を許可する以前にモニタリングを行い、必要な場合は忠告がなされるでしょう。
質問者:もう一度うかがいますが、理にかなった範囲で起こりうる最悪のシナリオ、そして理にかなってはいないけれども想像できる最悪のシナリオについて教えてください。
ジョン:理にかなった範囲で起こりうる最悪のシナリオについては、原子炉のうちの一つが危機的な状態に陥り爆発を起こすということです。可能性の低いものとしては3つの原子炉が爆発を起こすということですが、もちろんこれは不可能です。これは3つすべての冷却作業に失敗し、圧力をおさえることにもすべて失敗するということです。一つが爆発する可能性があっても、3つすべてが爆発する確率となると非常に低い。
司会:本当にありがとうございました。ここで終わりにしたいと思います。ロンドンにいるジョンをはじめとする皆さん、あなた方の率直な回答を聞くことができて本当に有り難かったです。今日の内容をネット上に掲載するまでには少々お時間をいただきますが、多くの方に見ていただきたいと思います。今日は本当にありがとうございました。
ジョン:最後にもう一つ。大地震や津波の被害によって多くの場所が廃墟と化し、日本はいま非常に大きな問題を抱えている。我々は原発に関する問題は二次的な問題であるとみなしています。
司会:皆さん、ありがとうございました。
お礼が遅くなりましたが、とても素晴らしい翻訳有難う‼この文章によって、無用な恐怖心から開放された友人は多いと思います。命がけで作業されている方々の無事を祈り、被災された方々に何が出来るのかを考えること。そして節電や、できる範囲で寄付などの行動を起こすこと。それが私達が最優先にすべきことですね。
妊娠中の方、お子様がいらっしゃる方など、自分以外の守るべき誰かのことを思うと、とても不安になると思います。そう考えると、食料や日用品の買いだめも、必ずしも「自分さえよければ」と思っているわけではないのだと思います。
社会全体の幸せと、自分の一番近くにいる大事な人たちの幸せ。上手にバランスをとりながら、可能な範囲でできることをしたいですね。