原発のこと

東北・関東エリアの電力不足を受けて、各地で計画停電が実施されているようです。ここいすみ市は何故かこれまで一度も停電になっていないのですが、自主的に出来る限り節電しています。電動工具を使う工事、オーブンでの焼き菓子の試作など電力消費の多い作業は状況が落ち着くまで見合わせることにしました。今だからできることをやろうと思います。

今まで何気なく、そして惜しげもなく使っていた電気。こんなにも大きなリスクが常に隣り合わせだったこと、日本中があらためて感じていると思います。聞き慣れない専門用語、不安を煽る報道、そして目に見えない放射性物質の恐怖に多少なりとも不安を感じている人も少なくないのではないでしょうか。

すでに避難された方々も含め、福島第一原発周辺に住む多くの人にとって、日々大気中に放出されているであろう放射性物質は、余震や津波と同様の(たぶんそれ以上の)大きな心配ごとなのだと思います。

では関東に住むぼくたちは今の事態をどのように受け止めたらいいのでしょうか。これに関してはみなさんそれぞれ異なる意見、考え方を持っていらっしゃることと思います。巷にあふれる情報の中からどれをピックアップし、どれを信じるかは個人の自由、個人の責任です。

ということで今日は今原発で起きていることについての情報を少し紹介したいと思います。

まずは友人が福島の原発で起きている事態について、自分の子供に説明するために見せたYouTubeの動画です。この動画については賛否両論あると思います。ぼくは原発のことについて恥ずかしながらほとんど知らなかった。だから何が真実なのかはまだわかりません。政府や専門家の言動に懐疑的になろうと思えばいくらでも不安になれると思います。でもこの動画が言わんとすることを深読みせずいられるくらいが、ぼくにはちょうど良いかな。どう思うかは個人の自由。だからぼくがこれを信じて、もし真実が違っていたことがいつか判明したりしても、信じたぼくの責任。みなさんもご自身の責任においてご覧ください。

次は、今朝のInterFMの番組で紹介していたイギリスの専門家と日本に住むイギリス人のやりとりです。このやりとりの中にもあるように、今の福島第一原発の状況は世界中でモニタリングされています。日本で一般の人が報道を通じて知るよりずっと詳細なデータを、世界中の専門機関が常に注意深く見守っているようです。その上でイギリスの専門家が今の状況、そして想定される事態について見解を述べています。ホタルカフェのお菓子担当が自主的に翻訳したものなので、完全ではないかもしれませんが、興味のある方は気合いを入れて読んでみてください。ちなみに時間がなかったので前半2/3くらいまでしか訳せてませんが、続きはまた明日。長いですよー。(原文はこちら

以下、原文を和訳したものです =============================

2011年3月15日、英国大使館主催によるテレビ会議が行われ、ロンドン在住の英政府最高医学・科学責任者ジョン・ベディントン氏を中心に英国保健省のヒラリー・ウォーカー氏、英国健康保護局のレスリー・プロクター氏などが参加、福島第一原発の現状と今後について討論会が行われました。

司会:現在、日本国内では非常に多くの噂や異なる情報、新聞やマスコミによる様々な関連記事が飛び交っています。英国大使館では日本における最新情報をお届けするとともに、本国の科学、放射能、地質学専門家などによる見解やコメントも非常に重要かつ有益と考え、ホームページ上などで随時お伝えしていきたいと思っています。それではジョン、現在の福島第一原発における現状についての見解をお願いします。

ジョン:はい、それでは私なりに現在の状況をどう見るか、考えうる最悪の事態、そして今後起こりうる最も可能性の高いケースについて専門的見地からお話ししたいと思います。

ご存知の通り、現在日本では海水を注入するなどして原子炉の温度を下げようとしています。これは最初に取るべき防衛措置であり、今のところかなりのレベルで功を奏していると考えられます。基本的に原子炉は大きな格納庫の中にあります。しかし冷却が十分に行われなかった場合、格納庫の中の圧力が高まり、制御不能な状態に陥ります。そのため、庫内の水蒸気を一部外へ放出し、圧力を下げるという措置が取られましたが、これによって大気中に放出される放射性物質の量は非常に少なく、心配する程度のものではありません。

そして新たに格納庫の一つで爆発が起き、一部が損傷したというニュースが入ってきました。その後も状況はさほど変わらず、引き続き原子炉の温度を下げる、そして庫内の圧力を上げないための措置がとられています。この措置には、非常に限られた量の放射性物質が大気中に放出されるという事実が含まれます。これが現在の大まかな状況です。

まず最初の問いかけとなるのが、このような現状において健康被害が問題になるか否か、ということです。答えはイエス、ただし、原子炉のすぐ近辺に限っての話です。日本政府が発表している20km圏内という範囲設定は賢明かつ道理にかなったものと言えます。

次に、現時点において考え得る最悪のシナリオについて話をしましょう。もし今後、何らかの理由で原子炉の冷却と格納庫内の圧力の一定化に失敗し、メルトダウンが起こったとします。この「メルトダウン」というドラマチックな用語、、果たして「メルトダウン」とはどういう状態のことを言うのでしょうか? メルトダウンという言葉に含まれる状態は、原子炉の核が溶け、それによって放射能原料が庫内の床に崩れ落ちる、そしてそれがコンクリートや他の物質と反応し、最悪の場合爆発を起こすということです。これは何度も言うように最悪のケースであり、これ以上に悪い事態は起こりえません。このようなことが起こった場合、地上から約500mの高さのところまで大気中に放射性物質が放出されることになります。これはとても深刻な事態です。ただし、これもその原発のある地域に限ってのことです。もしも複数の爆発が起こったとしても、その地域以外の場所においては深刻な事態にはなりません。例えば、可能性として考え得る最悪の気象条件、つまり「原発のある地域から東京周辺に向かって強い風が吹き、さらには雨となって降る」などを想定した場合、東京周辺で健康被害などの問題が発生するか?その答えは議論の余地なく、ノーです。100%問題にはなりえません。問題は原子炉から30km圏内に限られます。

参考までに過去に起こったチェルノブイリ原発事故では、黒鉛原子炉で大変大きな火災が起き、爆発によって放射性物質が30000フィートの高さまで放出されました。500mではありません、914kmですよ。そしてその放出時間は数時間ではなく、何カ月も続き、放射性物質は大気中に、そして地上に非常に長い期間とどまったのです。しかしチェルノブイリの場合ですら、立ち入り禁止区域は30kmでした。そしてその区域外で直接的な被爆によって健康被害を受けたという事例は認められていません。問題は直接の被爆ではなく、その周辺の人々が長い間その場所の水を飲み、作物を食べていたことが大きな被害の原因となりました。このようなことが日本で起こるとは考えられません。ここで改めて強調したいことは、大きな問題として重要視すべきなのは、原子炉のごく近辺の状況と現場で働く人々の健康についてであって、20km、30km以上離れた場所において健康被害を心配する必要はまったくないということです。

ではここで英国保健省のヒラリーさんにも健康面の点で専門的意見を伺いましょう。

ヒラリー:特に私がここで強調したいのは、エリア外の人は健康面での心配をする必要はないということです。例えば東京在住の方、あなた方は原子炉から遠く離れたところにいます。東京においても放射線量率の測定結果が通常より高いといった情報がありますが、これは健康面への影響という点で言えば非常にささいな、取るに足らない事象です。ですから原子炉から離れた場所に住む人たちにおいては、健康被害を心配する必要はまったくないということを再確認していただきたいです。

ジョン:これが我々の見解です。原子炉から20km以上離れた場所においては健康被害について憂慮すべきことはまったくないということです。

司会:ありがとうございました。こちら英国大使館にも何人かの人たちに来ていただいています。ジョンやヒラリーに質問のある方、どうぞ。

質問者:先ほど話にも出ましたが、東京都内で放射線量率が通常の8倍の数値を記録したというニュースがありました。一般的にわれわれが心配すべき値は通常の何倍以上になった場合なのでしょうか?

ヒラリー:100といった単位の倍数だと思います。

ジョン:私もそう思いますね。どこからの情報かは分かりませんが、基本的に8倍といった数字は全く心配するに及ばないものです。100倍、200倍、あるいは300倍といった数値になって初めて、考慮すべき必要が出てきます。

司会:ありがとうございました。またここでポイントとなるのは、通常の放射線量率の何倍か、ということと許容値の何倍かということをはっきりと区別するということではないでしょうか。

ジョン:もちろんそうです。ヒラリー、許容範囲の放射線量の観点から見るとどうですか?

ヒラリー:これもまた100といった単位の倍数です。また、マイクログレイ、あるいはマイクロ何とか、といった単位の話であれば、それは非常に低いレベルのものであり、健康に被害が及ぶものではありません。

ジョン:ちょっと補足しますと、レベルのことで言えばその数千倍といった数値になって初めて憂慮すべき問題が出てくるということです。

司会:他に質問のある方?

質問者:お話を伺っていると、先生の見解は日本政府が発表する情報とは全く異なる、自らの知識に基づいたものという印象を受けますが、今回の事態を分析するにあたっては日本政府の情報ではなく、自らが持つ原子炉等に関する知識をもとに行っているのでしょうか?心配なのは、東京電力あるいは日本政府が出す情報が正しいものではないということです。また、個人的には原発における危険性はあと10日ほどは続き、その後徐々に消えていくのではと思うのですが、先生はどう思われますか?

ジョン:まず我々が入手している情報は、日本政府あるいは権限を委任されている機関がしかるべき国際機関に上げている情報です。これは事故が起きた場合の一般的な道筋です。独自の組織を作って、直接的な情報を仕入れれば、またメリットがあるのかもしれません。でも、彼らがしかるべき国際機関に上げる情報はかなり包括的な内容です。そしてもう一つ再認識していただきたいのは、あなたが何らかの方法で放射能に関する真実の情報が隠蔽されている、といったわけもなく怯えた見解を持っていたとしても、それは不可能なのです。なぜなら、いま問題となっている日本の原子炉は世界的にモニタリングされているからです。実際我々は外部から現在の放射線レベルがどのくらいなのかしっかりと監視することができます。確かに日本政府がすべての情報を公表しているのかといった懸念はありますが、実際に我々は国際的なエネルギー機関から情報を得ており、原発がどのような状態にあるかといった点についてかなり詳細な内容を把握しています。また、福島と同様のタイプの原発について知識があるNNL(国家核安全研究所)の専門家による情報や、まさに現在福島の原発から数十キロしか離れていない場所で任務に就いているSAGEグループからの助けも得ています。そう言った点からも我々が得ている情報には十分な信憑性があると確信しています。

二つ目の質問、いつになったら事態は収束するのか? 答えは「わからない」です。ご存知のように、この問題については非常に多くの不確定要素があります。例えば今朝発生した水素爆発については私も少々驚きました。おそらく冷却のために海水を注入していたバルブが損傷したため、冷却が効果的に行われなかったと考えられます。ただこれは修復されるだろうと思います。鍵となるのは水を注入し、全てを冷却し、圧力を一定に保つことであり、それらが成功していれば大丈夫です。今朝ロンドンで放送された番組でも同じ質問をされ、10日間ぐらいは特に悪化することはないかもしれないとコメントしました。しかしこれは仮定であり、現段階ではこのことについて明言はできません。

質問者:現在東北地方には非常に多くの救助救援を必要とする人たちがいます。ボランティアで現地に赴こうとしている人たちにアドバイスはありますか?

ヒラリー:政府あるいはしかるべき機関の指示に従うこと。その場を離れてくださいと言われたら離れる、屋内に退避と言われたらその指示に従う。また、決して20~30kmの原発立ち入り禁止区域には足を踏み入れないこと。おそらく実行は不可能だと思いますが、試みようともすべきではない。

司会:他に質問はありますか?

質問者:先ほどチェルノブイリ原発事故では30000フィートの高さまで放射性物質が放出されたけれども、現在日本で起こっているケースについては最悪の事態を想定しても500mであると。なぜチェルノブイリと比較してそんなにも小さい被害で済むのか、説明していただけますか?

ジョン:チェルノブイリではまず最初に原子炉の天井が吹き飛び、次に炉心の周辺にある黒鉛原子炉が火に包まれ、長時間に渡って燃え続けました。超高温の火炎が原子炉内のすべての物質を押し上げ、放射性物質が上昇気流に乗って大気中に舞い上がりました。福島のケースにおいては、もしも内部の圧力が高まれば、放射性物質が他の物質と反応して爆発が起きますが、これは単独の爆発であり継続して起こる爆発ではありません。一回の爆発で大気中に放出される放射性物質はおそらく最高500m程度であろうと予測されます。正確には517mあるいは483m、その程度です。そういった観点から、これに悪条件の天候を加味してもなお、20km圏外においては人間の健康に重大な影響を及ぼすようなレベルではまったくないということです。

司会:ありがとうございました。もうお一人、質問のある方がいるようです。

質問者:数日前、気象庁がこの何日かの間にマグニチュード7以上の余震が発生する可能性が70%であり、津波が発生する可能性もあると発表しました。もしこれが現実となった場合、原発における先生のおっしゃる最悪のシナリオにはどのような影響があるでしょうか?

ジョン:先ほど申し上げた最悪のシナリオに変化はないと思います。基本的に問題の焦点となるのは現在行われている冷却や格納庫内部の圧力の一定化に失敗した場合に、爆発が起きます。最悪のシナリオとして単独の爆発を想定していますが、もし新たに巨大な津波が襲った場合、比較的低い確率ではありますが、一つではなく二つの爆発が起こるかもしれない。ただその場合でも、放射性物質が放出される高さは単に500mの2倍で1000mとなるわけではなく、依然として最高500m前後にとどまります。また比較的短期のものであり、長く続くものではありません。またそのときの風向きもポイントの一つです。もし放射性物質を含んだ大気が海の方向に流れれば、問題はないでしょう。爆発が何カ所で起きるのか、そのときの天候はどうなのか、それらの組み合わせによっても変わってきます。もしも大きな津波がやって来て、冷却作業がまったく出来なくなれば問題が生じるでしょう。その場合、もしかしたら3つすべての原子炉が爆発するかもしれない、それでも我々がお話ししている最悪のケースにさほどの違いはありません。

質問者:現在のところ、日本のブリティッシュスクール(渋谷区)は休校しており、子供たちやその親、スタッフにとっては非常に不安定な状況だといえます。お話を聞いていると、理にかなった行動として我々は10日以内に学校を再開すべきと思いますが、いかがでしょうか?

ジョン:放射性物質に関する危険性という点では、学校を休校にする必要はまったくありません。おそらく休校にしている理由は他にあるのだろうと思います。放射性物質の到達といった危険性を理由に休校にする必要はまったくありません。ヒラリー、どう思いますか?

ヒラリー:あなたの学校は東京にあるのですよね?東京エリアでは現段階では通常の生活以外に何一つ必要なことはありません。

司会:ありがとうございました。一つ言わせていただきますと、現在ブリティッシュスクールは停電や交通事情を理由に休校となっています。

コメントが2件あります

  1. by 西荻 |

    英国大使館の翻訳ありがとう。とても参考になりました。動画もわかりやすくてよくできてるな、と思います。政府は真実をいっていない!と懐疑的になっても仕方がないですよね。まずは節電・節水、できることを1つ1つ協力していくことですよね。知人のアメリカ人は大使館から国外に退避するように、なんて言われいるらしいけど日本に多く留まって東北に向けて食料や衣類を集め送っている外国人も実は多くいます。
    原発で作業にあたっている人々のことを考えると、私たちは感情的にならず冷静に過ごすことが求められているんだろうね。日本はこの痛みから必ず立ち直ると思ってます。ローな気分でいるときホタルカフェのブログをみているとほっとしたやさしい気分になれます。ありがとう。

  2. by hotarucafe |

    原発のことについては国内外でたくさんの専門家がいろいろな見解を述べているのだと思います。その全ての情報を集めて吟味して、信用できそうなものを見つけ出すのってきっとすごく大変ですよね。ぼくは大多数の人と同じように、そもそも専門知識がないし経験もないから、本当に本当にどれが真実かなんてわからないのかもしれません。

    どれが真実だとしても、ぼくたちの毎日の生活は続いていくし、本当に大変なことが起こったら、今漠然と心配していることなんて全部吹き飛んで、目の前のことに対処していくしかないと思っています。

    その対処のために正確な情報が必要なのだろうけど、、、。

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