「ランチはやってないんですか？」とよく聞かれます。実際、今ホタルカフェでお出ししているキッシュより、もうちょっと大きなキッシュは近いうちにやりたいと考えています。でもきっとタイミングというものがあるはず。無理なく、焦らず、じっくり考えて。お店としての体裁や目先の利益ではなく、ホタルカフェの成長に合わせて、少しずつ、少しずつ。

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1年半ほど前、金属を被せてあった奥歯の根本が痛み歯医者さんに診てもらったところ、あれよあれよという間にその歯を抜くことになってしまいました。なんだか納得がいかないまま、奥歯がなくなり、さらにはその歯を補うためにブリッジにしましょう、ということに。しかもブリッジにするには、両脇の健康な歯をたくさん削らないといけない。

いよいよブリッジの準備に入ろうというときになって、何だかどうしてもしっくりこなくて、結局ブリッジの話はいったんストップしてもらうことになりました。奥歯がなくてもその奥の親知らずは生きていて、咀嚼も噛み合わせも特に問題なかったためか、何となく時間が過ぎ、とうとう1年半が経過。

そして先日ようやく重い腰を上げて、欠損した歯のことを相談しに別の歯医者さんに行ってきました。ただ漠然と、何かしら治療をしなくちゃいけないんだろうなあ、と思ってはいたのですが、ブリッジにするには他の歯を削らなければならないし、異物を身体に打ち込むインプラントはとても違和感があるし、でも入れ歯ってのはちょっと、、、という感じでとても憂鬱な気分で歯医者に向かったのです。

レントゲン撮影をし、先生に自分の歯の状態を説明してもらい、「治療の方法はいくつかあるけど、どれをやりなさいっていうのはないんだよ」と言われました。そしてその後の先生の言葉に驚きました。

「でもね、もし僕があなただったら、治療はせずに奥歯がないままにしておくよ。」

こんなことを言ってくれた歯医者さんに、ぼくは初めて出会いました。

「ちゃんと噛み合わせもしっかりしていて、咀嚼に問題がないのなら、今焦って何かをする必要はない。歯の一番硬いエナメル質の部分を無理矢理削ってブリッジにするのは、歯そのものの寿命を著しく縮めることになるし、インプラントというのはとても良い治療だと思うけど、最終手段にとっておいてもいい。これから長い時間付き合っていく自分の歯なんだから、ライフスタイルにあわせて、ゆっくり治療計画を考えていきましょう。」

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長い時間付き合っていくのだから、ライフスタイルにあわせて、ゆっくり考える。ホタルカフェのことを考えるとき、ぼくたちもこの歯医者さんのような考え方を忘れずにいたい。お店としての体裁を気にして、焦ってランチを始めたり、営業時間をいろいろいじってみたり、テーブルをたくさん増やしたり。目先のことばかりに気をとられて、ぼくたちの現在地を忘れてしまわないようにしたい。

今お出ししているタルトやキッシュを美味しいと言ってくださるお客様がいる。今のホタルカフェで過ごす時間をとても楽しいと言ってくださるお客様がいる。そんなお客様の言葉が、笑顔が、ぼくたちの中にも循環して、ホタルカフェを形作っているのだと思います。ホタルカフェには、血が通った、魂の宿った場所であってほしい。そして、そんなホタルカフェ自身の声に注意深く耳を傾けていれば、いつ何をすべきかは、自ずとわかるような気がしています。