昨年のちょうど今頃、ぼくたちが間もなく移り住むことになる土地の神社を訪れたことを思い出しました。杉林の中の急な階段を上ると、そこに現れたのは賽銭箱も装飾も取り払われたシンプルな神社。その時点では何ひとつ決まっていなかったのに、1年後の今、ぼくたちはその小さな神社が見守る静かな場所で新たなスタートを切ることになります。

初めて訪れたときにもらったおすそわけ

これまでにも何度となく移動を繰り返してきました。どこにでもすぐに順応し、新しい場所での生活を楽しむ術を身につけた一方で、ひとつの場所にしっかりと根をはって、数十年を同じ場所で暮らしていく覚悟を何となく避けてきたような気がしています。常に変化を求めていたというと聞こえが良いのですが、ひとつの場所に住まうということに伴う責任のようなものから、ただただ逃げ続けていたのかもしれません。

そして今回初めて、自分としてはかなりの覚悟を持って、新しい場所へ移り住むことになりました。地域の方々との関わり、ホタルカフェという場所を営む責任、自然環境への影響を考えること。そしてそれをいつまでも続けていく覚悟で一日一日を過ごしていきたいと思います。

ニュージーランドに住んだり、日本に少し戻ってきてみたり、フラフラと過ごしてきたとは言え、これまでの海外生活で得た経験はこれから少なからず活きていくことになると思います。自分とは全く違う考え方や価値観を持って生きている人たちとの関わりの中で、物事を様々な角度から捉えようと努力することの大切さ、自分で勝手に築いてしまった壁を打ち破って、とりあえず新しいことにチャレンジしてみる勇気、そして毎日繰り返される日々の小さなことに対しても真摯に向き合う姿勢を学びました。

これまでたくさんの新しい場所に住んできたのは、全て今回の定住のための準備、というと少し大げさですが、今なら自分の中にある宝物を全て使って毎日を大切に過ごせるような気がしています。